収納は「たくさん作れば安心」だと思っていました

家づくりの打ち合わせをしていたころの私は、収納のことを完全に「広さの問題」だと思っていました。前に住んでいた賃貸がとにかく収納が少なくて、押し入れひとつに季節外の服も来客用の布団も詰め込んで、扉が閉まらなくなっていたんです。だから新しい家では「とにかく収納を増やしてください」と、ほとんどそれしか言っていなかった気がします。

実際、間取り図のうえでは大成功でした。納戸、パントリー、階段下、ウォークインクローゼット。間取り図を見せてもらったときは「これだけあれば一生片づく」と本気で思っていました。

でも、住み始めて半年もしないうちに、リビングのテーブルの上にまた物が溜まりはじめたんです。収納はガラガラなのに、床や棚の上には物がある。あれ、おかしいな、と。

あとから気づいたのは、私が増やしたのは「量」だけで、「場所」のことは何ひとつ考えていなかったということでした。今日はそのあたりの失敗を、恥ずかしいのですが正直に書いていきます。

失敗その1 使う場所と、しまう場所が離れていた

いちばん大きかったのがこれです。我が家の収納は、使う場所からことごとく離れていました。

爪切りを取りに、家の端まで歩いていた

細かい日用品は全部まとめて、廊下の収納に入れていました。整理整頓としては正しいはずなんです。でも実際は、リビングで子どもの爪を切ろうとするたびに立ち上がって廊下まで歩く。これが地味につらくて、結局「あとでいいや」とリビングの棚の上に置きっぱなしになりました。

体温計も、ばんそうこうも、ペンも、同じ運命でした。そして棚の上は、使う場所の近くに置きたかった物の吹きだまりになっていったんです。

タオルが洗面所になかった

タオル類は大きな納戸にまとめて収納していました。たっぷり入って気持ちいいのですが、お風呂上がりにタオルを切らしていることに気づくと、裸のまま納戸まで取りに行くことになります。しかも納戸は廊下の反対側。

結局、洗面所の洗濯機の上に、常にタオルが何枚か積み上がっている状態になりました。せっかくの納戸が、ただの在庫置き場になってしまったんです。

掃除機が「二階に持って上がれない場所」にあった

掃除機は一階の階段下にしまっていました。一階を掃除するぶんには最高です。でも二階を掃除しようと思うと、わざわざ出して、階段を持って上がって、終わったらまた下ろす。この往復が面倒で、二階の掃除の回数が明らかに減りました。

家が散らかるのは物が多いからだと思っていたけれど、実際には「戻すのが面倒な場所にしまっているから戻さない」だけだったんですよね。

失敗その2 大きい収納ほど、中で物が行方不明になる

もうひとつの失敗が、大きな収納を作りすぎたことです。

納戸のような広い収納は、入れるときは本当にラクです。とりあえず放り込んでおける。でもそのぶん、何がどこにあるのか分からなくなります。我が家では、買ったことを忘れて同じ洗剤を三本持っていたことがありました。

結局、大きな収納は「よく使う物」には向いていなかったんです。向いているのは、季節家電やアウトドア用品のような、年に数回しか出し入れしないもの。毎日触る物は、小さくてもいいから手元に置き場所があるほうが、圧倒的に片づきます。

失敗その3 「とりあえず置く場所」を作らなかった

これは住んでから分かったことなのですが、暮らしの中には「まだしまう段階じゃない物」がけっこうあります。

  • 保育園から持ち帰ったプリントや連絡帳
  • 読みかけの本や、書きかけの書類
  • 明日また使う子どものお稽古バッグ
  • 返送しなきゃいけない封筒

こういう物をしまうと忘れるし、出しっぱなしだと散らかって見える。我が家にはその中間の置き場所がなかったので、全部ダイニングテーブルの上に集まりました。食事のたびに端に寄せる、あの生活です。

いま思えば、リビングの一角に浅い棚をひとつ用意しておくだけで、ずいぶん違ったはずでした。

じゃあどうすればよかったのか

住みながら少しずつ物の置き場所を入れ替えてみて、やっと分かってきたことがあります。

まず「その場所で何をするか」を書き出す

収納を考えるとき、つい「何を入れるか」から考えてしまいます。でも順番が逆でした。先に決めるのは、その場所でどんな動作をするか、です。

洗面所なら、顔を洗う、歯をみがく、タオルを使う、洗濯物を出す。リビングなら、爪を切る、薬を飲む、プリントを書く、子どもが宿題をする。こうして動作を書き出すと、そこに置くべき物が自然に決まってきます。

そして置き場所は、その動作をする場所から一歩か二歩で届く範囲に作る。これだけで、戻すのが面倒じゃなくなります。

収納は「分散」でいい

同じ種類の物を一か所にまとめるのが整理のコツだと思っていましたが、暮らしの中ではむしろ逆でした。ティッシュも、ゴミ袋も、ハサミも、使う場所ごとに分けて置いてしまってかまわないんです。

我が家はいま、ハサミが三か所にあります。几帳面な人には怒られそうですが、探す時間がなくなって本当にラクになりました。

家の中の「歩く道すじ」とセットで考える

収納の位置は、結局その家の中をどう歩くかとつながっています。洗濯物を干す場所、しまう場所、着替える場所。この三つが遠いと、どれだけ収納が広くても毎日しんどい。

打ち合わせのときに、間取り図の上を指でなぞりながら一日の動きを追ってみると、無駄な往復が見えてきます。収納の位置は家の中の動き方とセットで考えるのがおすすめです。私はこれを住んでから知ったので、設計中に気づいていればと今でも思います。

これから家づくりをする人へ

収納の打ち合わせで「どれくらいの広さが必要ですか」と聞かれたら、広さを答える前に、ちょっと立ち止まってみてほしいなと思います。

代わりに考えてほしいのは、「この家で、どこで何をするか」。朝起きてから夜寝るまでの動きを、面倒でも一度だけ紙に書き出してみてください。そうすると、その動きの途中に置き場所が必要な物が、ぽろぽろ出てきます。

収納は、広ければ片づくものではありませんでした。使う場所のすぐそばに、小さくてもいいから置き場所があること。それが、毎日散らからない家のいちばんの条件だったと、三年暮らしたいま実感しています。

我が家は失敗もしましたが、住んでから棚を足したり、置き場所を入れ替えたりして、少しずつ暮らしやすくなってきました。完璧じゃなくて大丈夫です。でも、設計のうちに気づけることは、ぜひ気づいておいてくださいね。

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